少し強引な誘い方だったかしら?
…ううん、強引なくらいの方がいいわよね。
はっきりさせておきたいの。先輩、私と逢ってる時も
あの人のことばっかり気にしてるんだもの…
同情で彼女__ううん、彼と接してるなら、もう止めにして。
貴男は魅力的な人なのに…彼と仲良くしてるってだけで、
陰でどんなふうに言われてるか知らないの?
だから、もう、あんな人のことは考えないでよ。

花火大会の日。
ケンちゃんを見送ると、あたしは思わずその場にうずくまって
しまった。ずっとがまんしてた腹痛がどっと襲って来て、
目の前が暗くなる。つめたい汗がいっぱい流れて来て、
立ち上がることができない…
あたし…死んじゃうの?やだ、そんなのやだよ。
死んじゃったら、ケンちゃんを好きなこの気持ちも
一緒に消えてなくなっちゃうんでしょう?
「たすけて…ケンちゃん……」
あたしは無意識のうちにケンちゃんのなまえを呼んでいた。
 ぼんやりかすむ視界に人影が浮かび上がる。
「悠太郎!?おい、しっかりしろよ!!どうしたんだ!?」
…ケンちゃん?沙苗ちゃんと花火を見に行ったんじゃないの?
「どうも顔色が悪いから気になってたんだ…
 待ってろよ、すぐ医者に連れてってやるから!!」
「だめだよ、女の子との約束やぶっちゃ…
 沙苗ちゃん、待ってるよ…」
「馬鹿野郎」
ケンちゃんは短くそれだけ言うと、あたしを慎重に
抱き起こしてくれた。
…なんてあったかい腕だろう。

あたしはケンちゃんの背中から、川面にうつる花火をみていた。
ああ、なつかしいな…
いつかも、この川沿いの道をケンちゃんにおぶわれて
通ったことがあったっけ。

ケンちゃんのせなかはあの頃と同じように大きくて、
そうして、やっぱりあたしはいつまでも彼に面倒をかけてばかりいた。

+マエ+ +モドル+ +ツギ+

inserted by FC2 system